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NPO法人医薬ビジランスセンター(薬のチェック) 浜 六郎
沖縄県で2009A/H1N1インフルエンザ(いわゆる新型)に感染した沖縄県宜野湾市の男性(57)が入院先の病院で死亡したとの報道があった。死者は初めてとのことである。
報道によると、この男性は心筋梗塞(こうそく)の治療歴があり、慢性腎不全で人工透析を受けていた。9日午後から、のどの痛みなどの体調不良を訴えていた。10日に病院で透析を受けた際、37度台の発熱があり簡易検査を受け陰性だった。12日、透析中に39℃に上昇したため再度検査を受けたところインフルエンザA型陽性と判明。タミフルを投薬され、中部徳洲会病院(同県沖縄市)に入院したが、14日未明から容体が悪化し、15日午前6時54分に死亡した。
県が緊急に感染確認のための詳細(PCR)検査を行った結果、15日午後4時ごろ、新型インフルエンザに感染していたことが分かったという。
「新型インフルエンザに感染したことで肺炎を併発し、その後、敗血症を起こしたことが死因とみられ」たり、あるいは「心疾患や慢性腎不全の持病があり、免疫力が落ちている状態で新型インフルエンザに感染し、急速に容体が悪化した」との県の説明が報道されている。しかし果たして、「新型」によるといえるのか。
厚生労働省が公表している透析患者の死亡例
ここで 厚生労働省が公表している死亡例の1人(症例番号40)を紹介して、 タミフルが透析中の患者に使用された場合に、1個使用するだけでもいかに重大な結果が生じうるか、解説する。
54歳男性。高血圧の既往歴があり。糖尿病、糖尿病性網膜症、慢性腎不全および頚椎後縦じん帯骨化症で入院透析を行っていたが、全身状態は極めて不良であった。入院から約6週間後、インフルエンザと診断。翌日夕方、タミフル75mgを1回のみ服用(併用薬はアジスロマイシンとミノマイシン)。服用の数日後、下痢および全身倦怠感が出現し、肝機能障害が出現。下血を繰り返し尿毒症症状が悪化し、その後出血性十二指腸潰瘍で死亡した。
透析患者では1日以上後に血中濃度が6倍に
通常の腎機能の人と透析中の人を比較すると、抗ウイルス作用を有する活性体タミフルの血中濃度の動きは著しく異なる。
最高血中濃度に達する時間は、通常3~4時間に対して、透析中の人は4時間以降もどんどん上昇を続け27時間かかってピークの濃度に達する。その結果、最高血中濃度は約6倍に達する。血中濃度が半分になる時間は、通常5.5時間に対して、透析中の人は159時間と極めて長い。透析をすれば5分の1の血中濃度に低下するのだが、透析しない場合には、もしも1日2回使用されたとすると、血中濃度は腎機能正常者の12倍の状態が持続することになる。
活性体タミフルで腎障害、肺炎、出血、多臓器不全
健康人を対象にインフルエンザ予防に用いた臨床試験で、腎尿路系疾患が有意に増加しており、小児の臨床試験では使用終了後の肺炎が有意に増加していた。市販後にも肺炎や多臓器不全の例も多数報告されている。
動物実験でも、腎障害や肺炎、出血も生じている。これは、脳を抑制した未変化体のタミフルではなく、抗ウイルス作用を有する活性体のタミフルが人のノイラミニダーゼを阻害した結果と考えられる。
少なくともタミフルによる有害事象-徹底的に調査を
国は、国立感染症研究所で、死亡した男性の検体を用いてウイルスの変異の有無を確認するという。タミフルとの関係に触れている報道やコメントはないが、少なくともタミフル使用後2日以内に容態が悪化し2日余りで死亡したのであるから、死亡は、タミフルの有害事象として扱われなければならない。
さらに、上で指摘したように、因果関係についてかなり濃厚である。少なくとも、その可能性は否定できないはずである。害反応(副作用)として徹底的に検討が加えられなければならない。
転載元 医薬ビジランスセンター 速報板より
http://www.npojip.org/contents/sokuho/1.html